朝ドラ『あんぱん』で注目を集めているやなせたかし。その彼が1973年にサンリオとともに立ち上げた雑誌が、伝説の投稿誌『詩とメルヘン』です。
創刊号の制作費はたったの120万円、定価は350円。──でもちょっと待って、それって今の物価で言うとどれくらい?
この記事では、当時の物価・出版事情・雑誌制作費の現代換算をくわしく解説しつつ、300円・350円の価値や、380円・450円と上昇した雑誌の定価推移・制作の裏側までじっくり紐解いていきます。

1970年代に300円代だった雑誌が、実は“1,000円以上の価値”だったなんて!?当時の夢や希望がつまった1冊、タイムスリップ気分で一緒にのぞいてみよう♪
1973年の雑誌制作費120万円は今いくら?
1973年に創刊された雑誌『詩とメルヘン』。当時、制作にかかった費用はたったの120万円だったと本人が著書で書いています。
この金額、一見するとそれなりに大きな額に感じるかもしれませんが、実は当時の出版業界では“奇跡的に安い”とされていました。
では、この120万円は現在の価値に換算するといくらくらいになるのでしょうか?また、他の雑誌と比べてどれくらいの規模感だったのか――その背景を見ていきましょう。
消費者物価指数(CPI)から換算
日本の物価の変化を知る上で、よく使われるのが消費者物価指数(CPI)1です。
1973年当時は、第1次オイルショックの影響でインフレが進み、物価は急上昇していました。その時期のCPIは、現在(2025年)と比べておよそ1/3〜1/2の水準。具体的には以下のような推移です。
年 | 消費者物価指数(CPI) | 備考 |
---|---|---|
1973年 | 約38.6 | 第1次オイルショック直前の水準 |
2025年(予測値) | 約111.8 | 基準年2020=100換算の場合 |
2023年時点で消費者物価指数は、1973年の約2.8倍に上昇。2このデータを元に計算すると、当時の120万円 × 約2.9~3倍 = 約350万円前後になります。

えっ…たったの120万円は今の350万円相当⁉でも、この金額で雑誌をまるごと1冊作ったっていうんだから、驚きだよね。
ちなみに現在の文芸雑誌やムック本の制作費は、フルカラー印刷や人件費の高騰もあって1号あたり数百万円〜数千万円が相場です。つまり、当時の『詩とメルヘン』がいかに破格の制作費で成り立っていたかが分かります。
赤字覚悟で社長に直談判!やなせたかしが語る“安い制作費”の理由
では、なぜそんなに安く雑誌が作れたのでしょうか?
実はこの制作費120万円は、やなせたかしさん本人が“すべて一人でやる”という、特別体制によって実現していました。
まず、『詩とメルヘン』を創刊したのは、あのサンリオ。当時のサンリオ社長・辻信太郎氏にやなせ氏から「売れないとは思いますが、雑誌をつくりたい」と声をかけ創刊号が発売されます。

中身はガリ版刷りの同人誌からやなせさんが選び、1篇3,000円の天才量を払って自分でレイアウトや絵、表紙を描いて作ったそう!

『ボクと、正義と、アンパンマン』に“オフへの誘い”にこのエピソードが入っているんだけど…詩=オフ!無料なのはオフだから当然って書いててビックリ!
辻さんは「一二〇万円だす。一冊も売れなくて赤字になっても、一二〇万円くらいなら平気だ。」といったので、一二〇万円で作りました。もちろんボクは表紙をかいて、挿絵をかいて、まるごとやって無料です。オフだから当然です。

一般的な雑誌制作費が当時数百万円〜数千万円だったことを思えば、この120万円という額は、まさに奇跡的な挑戦だったと言えるでしょう。
\『詩とメルヘン』創刊経緯/
定価300円・350円・380円…『詩とメルヘン』は今いくらの価値?
1973年5月に創刊された『詩とメルヘン』の創刊号の定価は350円(表紙より確認)でした。
先に紹介した物価の価格を見た方は、今の感覚で言えば「ちょっと高めの雑誌かな?」と思うかもしれません。そう、当時の350円は、現代の価格に直すとまったく別の重みがあります。
ここでは、物価の推移や当時の生活用品の価格から、その「350円の価値」がどれほどのものだったかを分かりやすく解説していきます。

創刊号350円、2号300円、6号(1974年1月号)~380円、臨時増刊号(1975年5月号)450円…となっていたよ。増刊号が少し高めの設定だったみたい。5
現在の価値に換算すると…約1,000円
まず、物価の変化を示す消費者物価指数(CPI)をもとに、1973年当時の「350円」が現代でいくらくらいの価値になるのかを計算してみましょう。
CPIでは、1973年はおよそ「38.6」、2025年は「約111.8」とされています。これをもとにすると、
つまり、2025年現在の価値にすると、350円はおよそ1,000円前後ということになります。

えっ、1000円って! もはや“ご褒美価格”…!やっぱり、文芸雑誌だけあって…子どもがふらっと買える値段じゃなかったかもね。
実際、現在の代表的な雑誌と比べても、当時の『詩とメルヘン』の価格は“高級雑誌寄り”でした。
たとえば…
こうして比べると、『詩とメルヘン』はジャンプの約3倍以上の価格。現代で言えば、『MOE』のような“やや高級な月刊誌”に近い位置づけだったと考えられます。

1973年の350円で買えたもの
「350円」がどれだけの価値だったのか、もっと実感してもらうために、1973年当時の生活用品の価格を見てみましょう。
当時の350円で買えたものは、ざっとこんな感じです。
品目 | 1973年当時の価格 | 350円で買える量(目安) |
---|---|---|
牛乳(1L) | 約165円8 | 2本 |
少年ジャンプ | 約100円 | 3冊 |
ティッシュペーパー(5箱パック) | 約120円 | 約3パック(15箱分) |
トイレットペーパー(12ロール) | 約150円 | 2パック |

ジャンプ3冊とティッシュ15箱⁉ どんだけ万能なの350円…!今の1,000円と似てるって言われると、妙に納得しちゃうね。
とくに紙製品は、当時はオイルショック前の価格水準でまだ安く、トイレットペーパーやティッシュをまとめて買えるレベルの金額でした。9一方で『詩とメルヘン』のような文芸雑誌は、高価な“特別な雑誌”という位置づけだったといえます。
こうした物価背景をふまえると、当時の読者が350円の雑誌を手に取るには、ちょっとした決意や贅沢さがあったはずです。
このように見ていくと、『詩とメルヘン』の創刊号価格「350円」は、今で言えば1,000円ほどの価値に相当し、当時の子どもや若者にとっては決して気軽な出費ではなかったことが分かります。

今の雑誌で1,000円なら付録付きだよね?詩雑誌が長く愛されたのは、それだけの“心に残る価値”があったからなのかもしれません。

定価は300円から600円へ!『詩とメルヘン』定価推移一覧表(1973〜2003)
『詩とメルヘン』は、1973年の創刊から2003年の休刊まで、30年にわたって読者に愛された雑誌です。そのあいだ、時代の変化とともに定価も数回にわたって見直しが行われました。
特に1973〜74年にかけての第一次オイルショックでは、紙製品全体が値上がりし、出版業界にも大きな影響を与えました。以下に、発行号ごとの定価と背景をまとめた表を掲載します。
発行号・時期 | 発売年月 | 定価(税込) | 備考(時代背景・価格改定理由) |
---|---|---|---|
創刊号 | 1973年5月 | 350円 | 季刊誌として創刊。サンリオ×やなせたかしによる新雑誌誕生。 |
2号 | 1973年8月 | 300円 | 創刊直後に価格見直し。投稿数増とコスト調整か。 |
4号 | 1973年12月 | 300円 | 引き続き300円を維持。まだ季刊体制。 |
6号(新春号) | 1974年1月 | 350円 | 7号以降月刊へ。第一次オイルショックで紙代が急騰。 |
臨時増刊号(絵本増刊) | 1975年5月 | 450円 | 特製ノートとのセットの豪華増刊号。通常号より価格高め。 |
84号 | 1980年1月号 | 450円 | 物価安定期ながらこの号より価格上昇。月刊誌がこれまでの増刊号価格450円へ。 |
143号 | 1984年3月 | 500円 | インフレ対応か。1989年4月1日より消費税導入。 |
239号(6月臨時増刊号) | 1991年6月 | 1,030円 | 増刊号が倍の価格へ上昇!月刊誌の定価は変わらず。 |
322号 | 1998年4月号 | 740円 | 1990年代後半には定価が740(税込)へ。 |
最終号(特別号 惜別永久保存版) | 2003年8月 | 950円 | 休刊号。企業努力で低価格維持のまま終刊。 |

最終的には定価740円になってたことから考えても、創刊時期の350円≒1,000円の価値ってのは、合っていそう!

増刊号でも1,000円(税抜)を超えないように努力していたのが分かるね。やなせさんの“届けたい気持ち”頼りの企業…じゃなく、個人努力がスゴイ…✨
2000年代でも740円という低価格を維持していた点は、雑誌文化が衰退する中でも「手に取りやすさ」を大切にしていた象徴といえるでしょう。
\詩雑誌『詩とメルヘン』が気になる方はこちら/

現在『詩とメルヘン』のような雑誌を作るといくらかかる?
「もし今、『詩とメルヘン』のような雑誌を新しく作るとしたら、いったいいくらかかるんだろう?」
そんな疑問が浮かんだ方も多いのではないでしょうか。
創刊当時はたった120万円の予算で始まった『詩とメルヘン』ですが、現代では同じようなクオリティ・規模の雑誌を制作するには、最低でも数百万円規模の費用が必要となります。
ここでは、現代の出版事情に合わせて、編集費・印刷費・原稿料・流通費など、内訳ごとにリアルなコスト感を見てみましょう。
🧾 想定条件
- A4判・フルカラー・80ページ前後
- 季刊(年4回発行)
- 1冊あたり定価1,000円
- 初回発行部数:5,000部
- 投稿作品+プロのイラストレーターによる誌面構成
📦 1冊つくるのに必要な費用の内訳
費目 | 想定費用(目安) | 内容 |
---|---|---|
編集費 | 300〜400万円 | 編集者・デザイナー・校正者の人件費、構成、DTPなど |
印刷・製本費 | 100〜150万円10 | フルカラー印刷、紙代、製本加工(5,000部分) |
原稿料・イラスト料 | 100万円前後 | 詩・エッセイ投稿への薄謝、プロイラストレーター数名への謝礼 |
流通コスト | 50〜100万円 | 書店流通マージン、JANコード、配送料、見本誌など |
宣伝・販促費 | 30〜50万円 | SNS広告、PR記事制作、イベント出展など |
合計 | 700〜800万円 | 1号制作に必要な概算合計 |

もちろん予算ありきで、それに収まるように作るんだろうけど…やっぱり、どんなに安くしようと思っても限界ってあるよね…。

📌 コスト増の主な理由
- 紙代の高騰
→ 世界的な資源価格の上昇や円安の影響で、特に上質紙・特殊紙の価格が高騰中です。 - 人件費の上昇
→ 編集者・デザイナー・イラストレーターなどクリエイター報酬の見直しが進んでおり、安価での依頼は難しくなっています。 - 広告収入の減少
→ 雑誌広告単価が年々下がり、赤字覚悟で創刊するケースも少なくありません。 - 書店流通の縮小
→ 雑誌売り場の減少や返品リスクの増大により、書店流通だけで利益を出すのは極めて困難な状況です。
とはいえ、近年ではクラウドファンディングやSNSコミュニティでの事前予約販売、電子書籍化などを活用すれば、ある程度リスクを減らしながら創刊する手段もあります。
ですが、1973年当時のように「志とアイデアと仲間さえいれば何とかなる!」という時代ではなくなっているのもまた現実です。

『詩とメルヘン』がたった120万円で夢を形にできた背景には、時代性・情熱・人との信頼関係が大きく関わっていたんだね◎
≫『詩とメルヘン』誕生秘話✨やなせたかしとサンリオ創業者・辻信太郎の友情雑誌
まとめ:350円に込められた“夢”の価値
1973年に創刊された『詩とメルヘン』。その制作費はわずか120万円、定価は350円という控えめな価格設定でした。

“売れるかどうか”より、“読者の心に届くかどうか”を優先したやなせさん。本当に“奇跡みたいなコスト”で雑誌つくってたんだね…!
また、現在では同じような雑誌を作ろうとすると、編集・印刷・原稿料・流通コストすべて含めて最低でも700〜800万円規模の費用がかかる可能性があります。
それでも、心に響く詩と、温かなイラストに支えられた『詩とメルヘン』は、今もなお、多くの人にとって忘れられない宝物のような雑誌として語り継がれています。

「言葉の力」「想像の温かさ」は、時代が変わっても価値を失わない。雑誌『詩とメルヘン』はそれを体現した、やなせさんからの毎月のお手紙だったんだね。
\『詩とメルヘン』はどんな雑誌だったの?掲載詩はこちら/

参考文献、資料:
- 消費者物価指数(CPI)(総務省統計局) ↩︎
- 主要商品の50年間における価格変移(上昇倍率、東京都区部・1973年から2023年) ↩︎
- 昭和40年の1万円を、今のお金の価値に換算するとどの位になりますか?(日本銀行) ↩︎
- オイルショックで世の中どうなった?その原因と経済への影響を振り返る(アセットマネジメントOne) ↩︎
- 詩とメルヘン 創刊号~50号(smokebooks) ↩︎
- 今月のジャンプ情報(週刊少年ジャンプ) ↩︎
- 絵本のある暮らし 月刊MOE ↩︎
- 牛乳と粉ミルクの価格推移(戦後昭和史) ↩︎
- 「狂乱物価」が来るか?物価上昇・インフレで、止まらない「現金価値」の低下(安藤証券) ↩︎
- 【学会誌印刷】費用・価格の仕組み(日本印刷出版) ↩︎
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