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やなせたかしは22歳で戦争へ!中国戦線の任務は宣撫班📝紙芝居・歌に託した“日中は双生の兄弟”【あんぱん実話】

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やなせたかしは、22歳で太平洋戦争(第二次世界大戦)に召集されました。入隊したのは、小倉連隊。その後中国・福建省福州市(ふっけんしょうふくしゅうし)へ向かいます。銃を持って戦うのではなく、言葉や絵を使って現地の人々の心に訴える「宣撫班(せんぶはん)」の一員として、紙芝居や歌を通じた“心の戦争”に参加していたのです。

朝ドラ『あんぱん』第12週では、やなせた氏のこの体験をもとに、嵩が描いた紙芝居「双子の島」や、現地の少年・リンとの交流や決裂(岩男が銃撃される事件)が描かれました。

本記事では、やなせたかしがどのような任務を担い、どんな思いで宣撫活動を行っていたのか──ドラマと実話を照らし合わせながら、知られざる戦争体験をひもといていきます。

きゅんはむ
きゅんはむ

やなせ氏は昭和16年(1941年)、22歳で小倉の野戦銃砲隊へ入隊。『あんぱん』では嵩に、昭和17年(1942年)に召集令状が届いたね。

※戦争体験については、やなせたかし著書『ぼくは戦争は大きらい』、『アンパンマンの遺書』を参照しています。やなせ氏が描いた紙芝居のタイトルは『双生譚』、『双生児物語』、『双子ものがたり』とされています。1

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【実話】やなせたかしは戦争で“何をしていた”のか

朝ドラ『あんぱん』第12週では、嵩が中国に渡り「宣撫班」として活動する様子が描かれます。これは、やなせたかし氏自身の実体験をもとにした描写であり、「戦争で武器は持たなかったけれど、心を操る戦争に関わっていた」という事実が見えてきます。

≫【やなせたかし戦争実話】伍長は偉い?軍隊の階級制度、暗号班の任務も解説

やなせたかしは22歳で召集、最終的に中国・福州へ

やなせたかし氏が召集されたのは昭和16年(1941年)、22歳のときでした。彼は小倉の野戦銃砲兵連隊に入隊し、当初は内地で暗号班として勤務していました。しかし、戦況の悪化にともない、1944年には中国の福州(福建省)へ派遣されることになります。

彼が従事したのは、敵の情報を扱うスパイ的な任務ではなく、「宣撫活動」と呼ばれる戦地広報の一種。最初は暗号班だったものの、のちに「宣撫班」に異動し、まったく異なる“戦争”に携わることになりました。

きはむ
きはむ

戦争で紙芝居?なんか想像と違う…。でも“心を支配する”って意味では、こっちの方が怖いかもしれないね。

中国での任務は“宣撫班”だった

宣撫班の目的は、占領地の住民の心をつかみ、日本軍に協力させることでした。いわば“心の戦争部隊”であり、プロパガンダを通じて住民の感情を操作する役割を担っていました。

粟屋義純 著『戦争と宣伝』,時代社,昭14. 国立国会図書館デジタルコレクション
粟屋義純 著『戦争と宣伝』,時代社,昭14. 国立国会図書館デジタルコレクション
粟屋義純 著『戦争と宣伝』,時代社,昭14. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1462818 (参照 2025-06-04)

やなせたかし氏が実際に行っていたのは、子どもたちへの紙芝居の上演や歌の披露。戦意高揚や親日的な感情を抱かせるような内容が中心で、兵器を持たずとも戦争に加担しているという自覚に、やなせ氏は葛藤を抱いてたのではないでしょうか。

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【史実】宣撫班とは?知られざる“戦争プロパガンダ”の現場

朝ドラ『あんぱん』の描写からは、宣撫班の活動が一見「穏やか」なものであったかのように見えるかもしれません。しかしその実態は、戦争という暴力に“言葉と文化”で加担する役割でした。

紙芝居と歌で“日中友好”を演出する任務

やなせ氏は、子どもたちに向けて紙芝居を上演したり、歌を歌ったりしていました。その内容の一例が、「日本は兄、中国は弟。日中は双生の兄弟である」というスローガン。これは当時の日本が対外的に掲げていた“日中友好”の建前であり、実際には侵略行為を正当化するための思想的道具でした。

この「双生の兄弟」論は、紙芝居や歌を通じて繰り返し子どもたちに刷り込まれ、文化的な支配の一環として機能していたのです。

きゅんはむ
きゅんはむ

笑顔で紙芝居をしてるけど…内容は完全に“洗脳”なんだよね。やなせ氏は自作した紙芝居の評判は中国でも上々だと言っていたけど誤訳されていたっぽい?

やなせたかしの複雑な心情:笑顔の裏にあった葛藤

著書で“紙芝居をやってると、みんなが笑う”と言っていたように、やなせ氏が作った紙芝居はどこまで現地の人に伝わっていたのかは怪しいところです。

 紙芝居をやっていると、まったく笑うような場面じゃないのに、みんながゲタゲタ笑うんですよ。それも満場一致で大笑いです。
「ここは泣くところで笑うはずはないんだけどな」と思うようなところでも笑う。
 あんなにひっくり返って笑うことはないだろうに、とぼくは思うのです。
 どうやら、通訳を頼んだ中国人が勝手な訳を付け足しているみたいなんです。

引用:ぼくは戦争は大きらい ~やなせたかしの平和への思い~ (小学館クリエイティブ)

きはむ
きはむ

著書を読む限り、かなり違う話になっていたのでは?と思うけど…ご本人も“中国語が分からないからどうしようもなかった”みたい。

やなせ氏が戦地で体験した出来事は、戦後のやなせ氏の人生観──「本当の正義とは何か」「命を大切にすることこそ真のヒーロー」──へと深く影響を与える原点でした。

戦地で命を奪うことも、心を奪うことも、やなせ氏にとっては等しく「戦争」だったのです。

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【ドラマ比較】朝ドラ『あんぱん』12週の“宣撫活動”は、実話!

朝ドラ『あんぱん』第12週では、嵩が「宣撫班」として占領地で紙芝居を上演する場面が描かれました。これらの描写は、実際のやなせたかし氏の戦争体験に強く基づいたものです。

嵩の任務内容と紙芝居の内容は何だった?

嵩が任命された「宜撫班」は、住民に医療や娯楽を提供し、日本軍に協力的な雰囲気をつくることが任務でした。ドラマでは、日本兵を“桃太郎”に見立て、鬼退治のように描いた紙芝居が地元民に反発されるという印象的なシーンがありました。

その後、嵩は「日本と中国は双子のような存在だ」と説く新しい紙芝居を創作します。このアイディアは、清のノートに書かれていた「日中は双生の兄弟」というフレーズから着想されたもの。これは実際に、やなせたかし氏が中国で行っていた宣撫活動とほぼ同じ内容です。

きゅんはむ
きゅんはむ

紙芝居って、ただの娯楽じゃなくて“戦争の道具”でもあったんだね。嵩が描いたのは“優しさや友情”のはずなのに、それすら戦争に使われるのが切ないよ…。

“戦わない任務”の裏にある重いテーマ

粟屋義純 著『戦争と宣伝』,時代社,昭14. 国立国会図書館デジタルコレクション
粟屋義純 著『戦争と宣伝』,時代社,昭14. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1462818 (参照 2025-06-04)

宣撫班は直接戦闘に関わらない任務でしたが、決して「安全な仕事」ではありませんでした。現地の人々の反発や緊張感の中で行動しなければならず、時に危険を伴うことも。

そして何より、自由を愛するエンターテインメントが、戦争に“利用される”という皮肉。このことからも分かる通り、戦うことよりも、“戦争の正義を信じさせる”ことの方が、よほど難しかったのかもしれません。

きはむ
きはむ

嵩が心の中で迷いながら紙芝居を描く姿には、まさにやなせ氏自身の苦しみが投影されています。

宣撫班としての活動はやなせ氏の実話ですが、現地の少年“リン”や岩男のエピソードはドラマの創作です。

気になる疑問Q&A:やなせたかしと水木しげるの違い

戦争体験を持つ漫画家といえば、水木しげる氏も有名です。水木氏は南方の激戦地で左腕を失うほどの過酷な経験。2一方、やなせ氏は中国・福州で宣撫班の任務を担当し、現地で終戦を迎えました。戦闘とは異なる形で“戦争に協力する”という現実を体験しています。

共通するのは、戦後に“描くこと”で戦争の痛みと向き合い続けたこと。それぞれの描線には、言葉にできない想いが込められていたのです。

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まとめ:宣撫班の任務は、“心を支配する”こと

やなせたかしが戦地で担った“宣撫班”の任務は、武器ではなく言葉や絵で人の心を動かす、いわば“心の支配”による戦争でした。

当時は正しいと信じて描いた紙芝居も、戦後には後悔と葛藤の象徴となります。ドラマ『あんぱん』で嵩が体験する宣撫活動の一つひとつは、まさに実話に基づいたリアルな描写です。

そして嵩が描いた「双子の島」の物語は、やなせたかしが“命の尊さ”を深く知ったうえで後年に描き続けた“アンパンマン”の原点にも、どこかつながっているのかもしれません。

【朝ドラ時代考察】関連記事

参考文献、資料:やなせたかし著書『ぼくは戦争は大きらい』、『アンパンマンの遺書』

  1. 戦場体験が問いかける「生存」とナラティブ(立命館大学国際平和ミュージアム平和教育センター) ↩︎
  2. 「総員玉砕せよ!」 戦友にささげた漫画 左腕失った水木しげるさん(毎日小学生新聞) ↩︎
mina

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