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【ブラッサム】秋山格之介のモデル・芥川龍之介と、短編『葱』の宇野千代|左良太・今東光/黒崎大三郎・滝田樗陰のモデル情報・出典まとめ

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2026年後期NHK朝ドラ『ブラッサム』で高良健吾が演じる作家・秋山格之介(あきやま・かくのすけ)。NHKが公式に「芥川龍之介をモチーフとした役」としています。

その芥川龍之介は、まだ無名だった20歳の宇野千代をモデルに、短編小説『葱(ねぎ)』(1920年1月発表)を書いた――と、言われています。

この記事では、動画で解説した内容は繰り返さず、動画では触れきれなかった補足情報と、視聴後にさらに深く知りたい方のための出典・参考URL・参考書籍をまとめています。

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動画の要点(モデル3人の対応関係)

ドラマ役名俳優モデル(と見られる人物)根拠
秋山格之介(あきやま・かくのすけ)高良健吾芥川龍之介(1892〜1927)NHK公式ブログで本人が「芥川龍之介をモチーフとした役」と明言
左良太(ひだり・りょうた)北野秀気今東光(1898〜1977)か?NHK公式では未発表/二次資料で「今東光と見られる」との推測あり
黒崎大三郎(くろさき・だいざぶろう)(未発表)滝田樗陰(1882〜1925)か?NHK公式では未発表/二次資料で「滝田樗陰と見られる」との推測あり

『葱』のモデルについては、以下の通り。

『葱』登場人物モデル根拠
お君さん宇野千代(1897〜1996)千代本人が『宇野千代 ちょっと自伝』で、散歩中の葱エピソードを「それをもとに芥川さんが『葱』という短篇を書いた」と証言
田中君今東光(1898〜1977)同じく千代本人の証言。「わたしが今東光と、本郷の町を散歩していたときに」と明言
お松さん不明千代の自伝・各種年譜に、燕楽軒時代の「年上の同僚女給」への具体的言及は確認できず(第5週動画で解説)
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動画では触れきれなかった補足情報

「田中君=今東光」説の根拠と、千代本人の証言

動画でも触れましたが、モデル説の最強の根拠は、千代本人の証言です。『宇野千代 ちょっと自伝』(1988年)での発言は以下の通り。

わたしが今東光と、本郷の町を散歩していたときに――八百屋の店先に、葱が売っていたの。二銭と書いてあった。あんまり安いんで、わたしが思わず、買ってしまったの。それで今東光はすっかり興ざめだったって……その話を、芥川さんにしたらしいのよ。それをもとに芥川さんが『葱』という短篇を書いた……。

ここで注目すべきは、千代が「芥川に話した」のではなく、「今東光が芥川に話した」と明言している点です。つまり――

  1. 千代と今東光が、本郷を散歩
  2. 千代が八百屋で葱を衝動買い
  3. 今東光が「興ざめした」話として、芥川に雑談で披露
  4. 芥川が面白がって短編に仕立てた

――という、又聞きの構造になっています。芥川自身は、千代の葱買いを直接見たわけではないんですね。

「左良太=今東光」説は、あくまで推測

ドラマ『ブラッサム』の左良太(北野秀気)のモデルについて、NHK公式は現時点(2026年10月15日)で明言していません。「今東光がモデル」というのは、役柄の立ち位置(秋山格之介=芥川と並ぶ若手文士)から類推した、ファンの推測の段階です。

動画本編でも「〜と見られる青年」「〜と言われています」という伝聞形で統一しています。

芥川『葱』の執筆事情――本人は「書きたくないのに書いた」

動画では触れませんでしたが、芥川は『葱』を気乗りしないまま書いたという事情があります。『葱』の冒頭を読むと分かるのですが――

おれは締切日を明日
みょうにち
に控えた今夜、一気呵成
かせい
にこの小説を書こうと思う。いや、書こうと思うのではない。書かなければならなくなってしまったのである。

青空文庫「葱」芥川龍之介

これは単なる文学的仕掛けではなく、芥川が実際に、原稿の締め切りに追われて、一晩で書き上げた作品だったと言われています。『新小説』1920年(大正9年)1月号への掲載。執筆日は1919年(大正8年)12月11日。

動画で紹介した「散歩中の葱エピソード」を、芥川が「ちょうど今、短編ネタを求めていた」タイミングで思い出し、一晩で小説の形に仕立てた――そういう経緯だったと推察されます。

今東光という人物――「毒舌和尚」になるまで

動画では「作家・僧侶・国会議員」と駆け足で紹介した今東光の、その後の人生を補足します。

年出来事
1898年横浜市伊勢町に生まれる(父は日本郵船の船長・今武平)
1920年前後新感覚派の作家として川端康成らと活動
1930年比叡山で天台宗の僧侶となる(出家)
1951年中尊寺の貫主(かんす=住職)となる
1956年直木賞受賞(『お吟さま』)
1968年参議院議員に当選(1期)
1971年天台宗大僧正に昇進
1977年結腸がんで逝去、享年79

晩年はテレビ・週刊誌で毒舌和尚として全国的な人気を博しました。瀬戸内寂聴(当時は瀬戸内晴美)の得度(出家)の師でもあります。

20歳の千代と出会った「絶世の美少年」が、半世紀後にはテレビで毒舌を振るう大僧正になっていた――という、人生の振れ幅の大きさは、今東光という人物の魅力の一つかもしれません。

「本郷の女王(クイン)」証言の出所――弟・今日出海

動画で紹介した「本郷の女王(クイン)」という表現は、今東光の弟・今日出海(こん・ひでみ/1903〜1984)の回想です。今日出海は後に文化庁初代長官を務めた文化人で、兄・東光より5歳年下。

兄が20歳頃に本郷の燕楽軒で千代と知り合った時、日出海は15歳前後の中学生だったことになります。兄が連れてきた、あるいは兄が話題にしていた「本郷の女王」――その印象が、後年の回想として残されたと考えられます。

滝田樗陰は、本動画では「案内役」にとどめた理由

動画では、滝田樗陰を「燕楽軒に芥川や今東光を連れてきた人」として簡潔に紹介するにとどめました。これは、滝田樗陰単独で、相棒とも言える編集者・嶋中雄作(しまなか・ゆうさく)とセットで、別の動画で詳述する予定だからです。

ドラマで黒崎大三郎(くろさき・だいざぶろう)が、どんな場面で登場するのか――その答え合わせの鍵になる動画になる予定です。公開次第、本記事にもリンクを追加します。

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動画で触れた事項の精度補足

『葱』の「2銭」と作中の「4銭」の違い

動画の第2章で紹介した千代本人の証言では「二銭と書いてあった」とありますが、芥川の作中では「一束四銭」となっています。これは、芥川が小説として執筆する際に、金額を変更した可能性が高いと考えられます。

ただし、以下の点は留意が必要です。

  • 千代の証言は60年以上後の回想で、金額の記憶違いの可能性
  • 芥川が「一束四銭」とした明確な理由は、本人が書き残していない
  • 当時(大正中期)の東京の葱の相場からすると、どちらも「安い」部類

動画では「生活感」の象徴として扱いましたが、厳密な金額の一致・不一致は、小説のテーマとは独立して考えるべきです。

千代の自伝での表現の揺れ

動画では『宇野千代 ちょっと自伝』を引用しましたが、千代は複数の自伝的著作を残しており、燕楽軒時代の描写には資料によって若干の揺れがあります。

  • 『生きて行く私』(1983年):燕楽軒時代の記述はあるが、「葱」の着想エピソードへの直接言及は控えめ
  • 『私の文学的回想記』:燕楽軒・今東光との交友の描写
  • 『宇野千代 ちょっと自伝』(1988年):葱の着想エピソードを明言

動画で引用した「それをもとに芥川さんが『葱』という短篇を書いた」は、最晩年(88〜91歳)の口述で、千代自身が最も明確にモデル説を語った資料として位置づけられます。

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参考URL一覧

一次資料(公式・公的機関・作品本文)

出典内容
青空文庫『葱』本文芥川龍之介『葱』全文/作中設定(お君15-16歳・神保町・田中君・葱4銭の場面)
青空文庫『葱』図書カード初出:『新小説』1920年1月号/書誌情報
青空文庫 芥川龍之介 作品リスト芥川の全作品一覧
NPO宇野千代生家「宇野千代のこと」燕楽軒18日間勤務、50銭チップ、芥川・今東光らとの出会い
宇野千代顕彰会 私製年譜1917年(大正6年)20歳で燕楽軒勤務の記述
岩国市観光振興課「宇野千代 – 文壇へ」藤村忠との上京、文壇デビューまでの経緯
山口県観光サイト「作家・宇野千代とは?」燕楽軒ウエイトレス18日間の裏付け
文京区公式サイト「宇野千代」本郷の燕楽軒で芥川・菊池寛らと知り合った記述(自治体公式)
関西学院「今東光」今東光の生没年・経歴(関西学院中学部出身・学校法人公式)
兵庫県立美術館 ネットミュージアム兵庫文学館「今東光」今東光略年譜(公的機関)
函館ゆかりの人物伝「今東光」今東光の生涯/函館市文化・スポーツ振興財団
函館ゆかりの人物伝「今日出海」弟・今日出海の経歴

二次資料(メディア・専門サイト)

出典内容
婦人公論「宇野千代インタビュー」千代の芥川評「雲の上の人」発言/『葱』モデル説の本人証言
千夜千冊『生きて行く私』松岡正剛による『生きて行く私』書評/燕楽軒時代の要約
Diamond Online「滝田樗陰」滝田樗陰の業績と人物像
serai.jp「見果てねど」滝田樗陰の夏目漱石邸人力車訪問エピソード
slownews「今東光が残した未公開書簡」『今東光[全年譜]』刊行に関する詳細

NHK公式(ドラマ関連)

出典内容
NHK『ブラッサム』公式サイトドラマ本編情報
NHK公式ブログ「秋山格之介役・俳優コメント」「芥川龍之介をモチーフとした役で朝ドラに帰ってくる事ができ、とても光栄です」と本人明言
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参考書籍一覧

芥川龍之介 作品

  • 『羅生門・鼻』新潮文庫
  • 『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫
  • 『芥川龍之介全集』(岩波書店)※『葱』収録

宇野千代 本人著書

  • 『生きて行く私』中公文庫
  • 『私の文学的回想記』中公文庫
  • 『宇野千代 ちょっと自伝』(本動画で引用。千代が88〜91歳のときの語り下ろし)

今東光 関連

  • 『今東光[全年譜]』2024年刊行
  • 『お吟さま』(1956年直木賞受賞作)
  • 今東光自伝
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